PERFECT よりすばらしき
2025年2月26日(水)
動画配信サイトで PERFECT DAYS を観たら
オススメに上がってきた役所広司さん主演の
『すばらしき世界』に目が留まって観てみました。
人生の大半を裏社会と刑務所で過ごしてきた
主人公の三上が刑期を終えて娑婆に戻ってきた
場面からはじまる浦島太郎的なストーリーでした。
今度こそカタギとして生きることを決意して
身元引受人の弁護士夫妻に出迎えてもらって
住む家を探して仕事を探そうとしていく物語で。
三上の犯罪や刑務所での経歴を記した身分帳から
社会復帰を目指す人のドキュメンタリー制作を
依頼されたテレビ関係のディレクターとか。
近所のスーパーの店長とか保護司の先生とか
三上のことを思って親身になってくれたりする
人たちと出会うけどトラブルを起こすんですね。
主人公の三上がこれまで生きてきた裏社会や
真っ直ぐすぎるけど不器用すぎる性格もあって
社会では生きづらいタイプの人なのでしょう。
そこには母親と別れて施設で育ってきたことや
その後に周りにいた人たちとの関わりなども
大きく影響しているんじゃないかと思います。
一度は地元福岡に戻って昔のヤクザ仲間の元に
身を寄せるけど反社会的勢力の取り締まりのため
今は昔のようにはいかない現実を突きつけられて。
東京に戻って介護施設で働き始めることになり
腹が立つことや馬鹿にされるようなことがあっても
グッとこらえてどうにか社会復帰していたのですが。
最後はもらったコスモスの花束をカゴに入れて
自転車で帰宅している途中で雨が降り出してきて
濡れたまま洗濯物を取り込んだところで倒れて。
そのまま亡くなってしまったところを発見されて
親身にしてくれた人たちが駆けつけてきたけど
帰らぬ人となった三上がそこにいたという話でした。
娑婆は我慢の連続ですよ我慢のわりに大して
面白くないけど空が広いといいますよという
三上のセリフはとても印象的だったんですよね。
思い通りにならなくても親切な人たちがいるし
仕事して働いて自分も社会の一員になれたんだ
という実感が持てたのが「すばらしき」なのでしょう。
PERFECT DAYS よりもすばらしき世界のほうが
パーフェクトというかすばらしい感じがしたのは
娑婆を厭うべき坊さんらしくないかもしれません。
でも臨床仏教師としては三上の周りにいた人たちが
彼に親切にしたり関わりを持ったりしているのが
なんか慈悲的な感じがする気がするんですよね。
幕切れがあっけなさすぎるし切なくなりましたが
やさしさや温もりの大切さを感じた映画でした。