少しずつでも歩み出されることを願って

2018年5月29日(火)

180529
これまでずっと話せなかったことを語り合えた一年間でした。
お母様を亡くされた方がポツリとお話しくださいました。
お商売がお忙しかったお母様には子どもの頃から話をする時間がほとんどなかったそうです。

床に伏せられるようになってお世話をする時間に積もる話を交わされることができました。
その中でお母様からポロッと漏れた「ありがとうね」の一言で過ぎし時間が変わりました。
永年にわたり胸につかえていたものが一気に溶け出して全てに感謝する気持ちに包まれたそうです。

それだけに最期を看取られた場所に近づくのが怖くて会えない辛さに苛まれておられました。
どうして一緒に連れて行ってくれなかったのだろうか・・・とばかり思ってしまう、と。
楽しみを求めて出かけたらいけない気がして家から外に出る気持ちになれないでいらっしゃいました。

こんな時に楽しみを見つけて出かけたら不謹慎でしょうかね、と自嘲気味におっしゃいました。
そうしたお気持ちになられることをお母様もきっと喜んでくださると思いますよ、とお応えしました。
募る思いを語る相手もいらっしゃらなかったので話ができただけでも少し楽になられたようです。

少しずつでも喜ぶお気持ちや楽しいお時間を持っていただけたら亡きお母様にご安心いただけますよ。
笑ったり笑顔になったりされるお姿を阿弥陀さまの元で微笑みながら見守ってくださいますことでしょう。
そう申し添えると幾分か穏やかなお顔になられたように感じました。

お仏壇に向かって手を合わせ心をこめてお念仏なさるお姿に心動かされたひと時でした。