地獄ではなくて餓鬼の道へ

2017年8月4日(金)

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「我が子のため良かれと思って計らうと地獄行きになると聞くと切ないですね」
あるご婦人が溜め息混じりにボソッとつぶやかれました。
何かと思ったら初めてお盆の由来をお聞きになった時に抱かれた想いでした。

釈迦さまの弟子の目連さまが神通力で母親を探されたエピソードが元になっています。
我が子を愛するあまり周りを思いやる心を失って我が子だけを優先していた、という話です。
そのため人間よりも苦しみが多いところへ落ちて苦しんでいた母を目連さまが見つけられたのでした。

でもお盆の由来の中では地獄ではなくて餓鬼の世界に落ちていたことが説かれています。
さっそく地獄ではなくて餓鬼の道へ落ちていらしたことを訂正してお伝えいたしました。
しかしご婦人にとってはどちらであっても切ない想いを抱かれることでしょう。

日頃、強欲だったり嫉妬深くて人を思いやる心がない人が餓鬼の世界に落ちると説かれます。
常に飢えと渇きに苦しみ食べ物や飲み物を口に入れようとした瞬間に炎と化す世界です。
自分が我が子のためにすればするほど苦しい世界へと落ちることになるのでは哀しいですね。

我が子を愛おしく思う気持ちは親心ゆえであって、それはそれでとても大事なことです。
平等を心懸けることは大切なことですが総てを完全に平等にすることは無理でしょう。
仏さまでさえ仏と成るための願いの中に平等の慈悲を入れていらっしゃるのですから。

我が子だけに限らず周りの人たちにも心配りをする気持ちを忘れないように、心懸けたいものです。

ちなみに画像の冊子は未来の住職塾を卒業したお仲間が作られた漫画「おぼんのおはなし」です。
お寺の三階納骨堂に置いてありますので、手にとってお読みいただけたら幸いです。