相続していただきたいもの

2017年7月18日(火)

170718
お独り暮らしのおばあちゃんが数年前に癌を患われて手術を受けられました。
入院される前、裏にお住まいの老夫婦のご主人に励まされていました。
「帰ってきたら、ワシがアンタのお世話したげるよ」と。

ところが裏のご主人は癌を患われて先に亡くなられました。
立て続けに奥さまがご病気を患われて入院されてしまいました。
でもこの奥さまは広い家に独りは嫌だからと戻ってこられませんでした。

誰も戻る人がいなくなってしまった家はまだ新築だったそうです。
でも老夫婦の新築の家は取り壊されて三階建ての大きな住居が工事中です。
老夫婦の息子さん一家が相続された広い土地を処分して新居を構えようとされています。

「私のお世話をしてくれると言うてくれたご主人も奥さんもおらんようになったんですよ」
「せっかくご先祖さまからいただいた広い土地や立派な家があったのに勿体ないよねぇ」
お独り暮らしのおばあちゃんが嘆かわしそうに呟かれました。

お独り暮らしのおばあちゃんは術後の検査も良好で体調もすっかり回復されています。
「わたしゃこうやって主人のお守りをやっていくだけですけぇねぇ」
何年もかけて何度も繰り返されるうちにお経をスラスラお唱えされるようになりました。

いま夏休みに息子さんたちが帰省されるのを楽しみに待っておられます。
「あの子たちが帰ってきたらお盆に一緒に主人のお参りをしますよ」と仰いました。
仏さまに手を合わせる心をぜひ息子さんたちに相続していただきたいものです。