火葬だけで送ることへの戸惑い
2026年5月8日(金)

ある葬儀社さんから「県外に菩提寺がある浄土宗の方の
お通夜とお葬式をお願いできますか」とご連絡をいただき
予定も問題なかったのでお引き受けすることにしました。
ひとまず亡くなられた方のお名前だけを伺っておいて
詳しい内容については改めて連絡をいただくことになり
その時点では普通のお葬式になるだろうと思っていました。
しばらくして葬儀社さんから再び電話が入ったとき
私はちょうどお寺を離れていたのですが、どうやら
「内緒でお葬式してもらえますか」と尋ねられたようです。
詳しい事情はわからなかったものの、ご希望があるなら
できる限り添わせていただくという返事をしたところ
さらにその後、また葬儀社さんから連絡が入りました。
「せっかくお引き受けいただいたのに、誠に恐縮ですが
今回のお通夜とお葬式はなかったことにしてください」
ということで、大変申し訳なさそうなお電話でした。
いきさつを伺うと、菩提寺さまから喪主さまに
「こちらで葬式をするから、そちらでは何もしないで
火葬だけ済ませて遺骨を持ってくるように」と言われたそうです。
故人さまが亡くなられたときから「こちらで葬儀をする」
という話だったようで、せめてお経だけでもと思われて
「内緒で…」という相談があったということでした。
事情を伺って「そういうご事情なら仕方ないですよ
全く問題ありません」と葬儀社さんにお伝えしましたが
頼んだのにキャンセルになったことに恐縮されていました。
問題ないと言いながら、どうしても心に引っかかったのは
故人さまがお経の一つもあげてもらわないまま送られることや
そうせざるを得ない喪主さまのお気持ちのことでした。
せめて火葬場で炉前読経だけでも伺うと言おうかな…と
一瞬頭をよぎりもしましたが、良かれと思ってのことも
かえって喪主さまがお困りになったら本末転倒です。
その土地ごとにお葬式の慣習はさまざまありますし
お寺にもいろいろな考え方やご事情がおありでしょうが
なんともモヤモヤした感じが残るご縁となりました。
今回は故人さまの前に伺って読経やご回向をするという
ご縁はありませんでしたが、お寺のご本尊さまの前で
心から手を合わせてお念仏を申しあげておきました。