昔の葬送儀礼を知る人がいるうちに

2023年12月22日(金)

231222
かつては自宅で息を引き取ることがほとんどで
そのまま自宅で枕経から葬儀をおつとめされて
自宅から出棺されて荼毘に付されていました。

一度だけご自宅から野辺送りで送り出されてから
しばらく歩いた先に待っていた車に棺を乗せて
火葬場へと出棺されるのを見送ったことがあります。

子どもの頃から葬送行列の風習は見たことがなくて
お手伝いで四国へ伺ったときに初めて触れましたが
野辺送りはもう見かけることはないでしょうね。

そんな話をしたら「私も子どもの頃に見たよ」と
山口出身の方が野辺送りで送り出したことがあって
しかもその頃は土葬だったと聞かせてくださいました。

亡くなった方を寝かせて棺に納めるのではなくて
膝を抱えた姿で直方体の棺桶に納棺させていて
穴を掘って棺桶を埋めて墓標を置いていたそうです。

しばらくしてお骨になった亡き方を埋め直して
上に墓石を安置してようやく埋葬が終わるのですが
いつの頃からか土葬が火葬に変わったということです。

すると「私が子どものころに見た火葬はね…」と
母方の里の長崎では墓所に穴を掘って薪を組んで
上に棺を置いて火を着ける火葬だったとお話くださいました。

子どもの頃なので直接は見ていなかったけど
番をする人が火葬されるご遺体を見守っていて
途中で身体が動くと聞いたことがあるというようで。

自分は墓所に棺を運んでいったのを覚えているけど
妹さんは幼すぎて記憶には残っていないらしく
自分がそれを知っている最後の世代だろうとのことです。

今はまだそうした死者を送り出す昔の儀礼について
体験した人がいるので話を聞くことはできますが
そのうち誰も分からなくなっていくのでしょうね。

葬送儀礼から手触り感が薄れているように思いますが
全国的に均一化しつつあるのが少し寂しい気がして
貴重な風習の話はなるべく伝えていこうと思いました。