夫婦位牌と蓮台と一蓮托生と

2019年3月20日(水)

190320
四十九日のお勤めに新しいお位牌を持ってこられていました。
亡きご主人のお戒名がお位牌の右に寄せて刻まれていました。
お作りになったのは亡きご主人の喪主でいらっしゃる奥さまです。

いずれご自身のお戒名も隣に刻んでいただかれることでしょう。
お位牌を作っていただいたお仏壇屋さんに勧められたのかも知れません。
あるいは参考になる何かをご覧になってご本人が選ばれたのかも知れません。

ご法事のあとで四国へ御流罪に赴かれる法然上人と九条兼実公のお別れのときの話をしました。
別れを惜しむ兼実公が「振り捨てて 行くは別れの はしなれど ふみ渡すべき 事をしぞ思う」と詠まれて。
法然上人は「露の身は 此処(ここ)彼処(かしこ)にて 消えぬとも 心は同じ 花の台(うてな)ぞ」と返されたことについて。

会えば別れはいつかやってくるものだからどうか深く嘆かないようにと法然上人が語られて。
宿縁が確かにあればこそ極楽に往生して同じ蓮の台(うてな)に座って浄土で再会することでしょうとも添えらて。
先立つ側が残された側を導くことでしょうからご縁のある人を迎え摂るご縁は浄土にいる人の楽しみですよと仰いました。

そして詠み人はわかりませんが昔から伝わる一蓮托生の歌を紹介しました。
「先立たば おくるる人を 待ちやせん 花の台(うてな)に なかばのこして」
ご自身が全く意図せずお作りになった片側の空いた夫婦位牌を胸に抱いた奥さまの目からは涙がとめどなく溢れていました。

より一層にお念仏に励んでくださるお気持ちになられた尊い四十九日のご縁でした。